🐾5 犬の「お腹の中」が心を映す?― 腸内細菌と不安・攻撃性の意外な関係 ―
科学が明かす、犬の心と腸の関係
最近の研究で、犬の「心の状態」と「お腹の健康」が、思っている以上に深くつながっていることがわかってきました。
カナダの研究チームは、家庭で暮らす犬たちの便を分析し、腸内細菌のバランスと犬の性格傾向(不安や攻撃性)との関連を調べました。
その結果、腸の中の小さな住人たちが、犬のメンタルに影響している可能性が見えてきたのです。
つまり、犬の「落ち着き」や「不安の感じやすさ」には、“お腹のコンディション”が関係しているのかもしれません。
研究チームと信頼性
- 研究機関:Memorial University of Newfoundland(カナダ)+ Dalhousie University の共同研究
- 掲載誌:Scientific Reports(Nature系・査読付き国際誌)
- 発表日:2025年7月8日
- 論文タイトル:Gut microbiota composition is related to anxiety and aggression scores in companion dogs
- 著者:Sarita D. Pellowe ほか
この研究は、家庭で暮らす健康な犬を対象に行われた初めての「腸内細菌×行動」研究のひとつ。実験方法も丁寧に設計され、国際的に信頼される科学誌で発表されています。
家庭犬を対象にした“腸と行動”の科学的アプローチ
- 対象犬:カナダ・ニューファンドランド地域に暮らす家庭犬 72頭
- 方法:
- 飼い主が「C-BARQ」というオンラインアンケートで犬の行動や性格を評価
- 不安スコアと攻撃性スコアを組み合わせてグループ化
- 便を採取し、腸内細菌のDNAを解析(16S rRNA遺伝子解析/Illumina MiSeq使用)
- AI(ランダムフォレストなど)を使って、行動と腸内環境の関係をモデル化
この研究は、シェルター犬ではなく、普段の生活を送る家庭犬を対象にしている点が特徴です。ストレス環境にいない「日常の犬たち」の腸内を観察することで、より現実的な関連性を探りました。
結果と結論
主な発見
わかりやすく言うと…
- 不安や攻撃性のスコアが高い犬では、Blautia(ブラウティア)という腸内細菌が多い傾向が見られました。
- 落ち着いた犬(低不安・低攻撃性)では、Faecalibacterium(フェーカリバクテリウム)がやや多い傾向がありました。
- AIを使った解析では、腸内細菌の構成だけで犬の「不安レベル」を約85%の精度で分類できました。
- 研究者は、「腸内環境のバランスが、犬の気質にも影響する可能性がある」と指摘しています。
「怖がり」や「神経質」な犬のお腹の中には、Blautia(ブラウティア)という菌が比較的多く、一方で落ち着いた犬には「腸を守る善玉菌」Faecalibacterium(フェーカリバクテリウム)が多い傾向が見られました。
これらの菌は、短鎖脂肪酸(SCFA)という物質をつくり出し、腸の健康を守る大切な存在。バランスが崩れると、炎症やストレス反応にも影響が出ると考えられています。
飼い主への気づき
「性格の問題」と思っていた愛犬の行動が、実は“腸の状態”と関係しているかもしれません。
たとえば、次のようなことが腸内バランスを変化させます:
- 食事の変化
- 日常のストレス
- 抗生物質の使用
愛犬の「心の健康」を考えるときに、お腹の健康も一緒に見直す視点が大切になりそうです。
獣医師に相談したほうがいいサイン
- 下痢や軟便が続き、最近落ち着きがなくなった
- 以前より怖がり・攻撃的になった
- サプリやフードを変える前に、腸と行動の両方を獣医師に相談したい
こうした変化があるときは、体のサインと心のサインを一緒にチェックしましょう。
まとめ
この研究は、犬の「心」と「お腹」が密接につながっていることを科学的に示した、とても意義深い報告です。
私たちが「性格」と感じている部分も、実は“腸の声”が関わっているのかもしれません。
まだ「原因と結果」は明らかではありませんが、愛犬のメンタルケアを考えるとき、
ごはんや腸の調子を見直すことが、やさしく寄り添う第一歩になりそうです🍀
参考文献: Sarita D. Pellowe et al., Gut microbiota composition is related to anxiety and aggression scores in companion dogs, Scientific Reports (2025).
※この記事は原著論文の要約です。診断や治療に関する判断は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。

