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Shelter Cats

🐾9 シェルター猫のストレスは何で変わる?最新研究でわかった「本当に大切なこと」

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今回の研究は、シェルターにいる猫がどんなときにストレスを感じ、どんな環境で安心できるのかを調べたものです。 「触ってあげれば安心するの?」「ケージを広くすればいいの?」という素朴な疑問に対して、 科学的な答えを示してくれています。

結論としては、猫が落ち着くために一番大切なのは“静かな環境”と“猫が自分から近づくペースを尊重すること”だとわかりました。

1. 研究の信頼性

この研究は、アメリカの複数の大学・動物行動学研究者の共同研究として実施されました。 論文は国際的な査読付きオープンアクセスジャーナルである PLOS ONE(Public Library of Science) に掲載されています。

PLOS ONEは、動物行動・福祉の分野でも広く引用される信頼性の高い雑誌です。 本研究は2024〜2025年に公開された最新のシェルター猫のストレス研究で、実データに基づいた科学的分析が行われました。

2. 研究の概要

研究チームは、2つの異なるシェルター(A:騒がしい環境、B:静かな環境)で猫たちを観察しました。 猫たちは次の4つのグループに分けられました:

  • シェルターA:窓の外に駐車場、人や犬の往来が多く、騒音が多い。
  • シェルターB:窓なし、一般公開なし、静かな環境。
  • ① コントロール(特別な介入なし)
  • ② なでるグループ(毎日、研究員が優しく接触)
  • ③ ケージの部屋を広くするグループ(ポータル付き)
  • ④ なでる+広いケージの組み合わせグループ

毎日、以下の項目を測定しました:

  • 尿量(健康&ストレスの身体サイン)
  • ストレススコア(CSS)
  • FAS Spectrum(不安・恐怖の指標)
  • 食事量・水分摂取量

これにより、環境・触れ合い・猫の自発的行動がストレスにどう影響するかが明らかになりました。

3. 研究の結果と結論

■ 触る・ケージを広くすることは「大きなストレス軽減」にはならなかった

予想に反して、介入グループ間の差はほとんどありませんでした。

■ しかし「猫が自分から触れたいとき」は別!

猫が自ら研究員の手に触れた場合は:

  • 尿量が明らかに増加(=リラックス)
  • CSS(ストレススコア)が大きく低下

強制的な接触ではなく、猫のペースを尊重した触れ合いが有効と判明。

■ “静けさ” が最大のストレス軽減要因

騒がしいシェルターAの猫はストレスが高めで、 静かなシェルターBの猫はストレスが少なく、尿量も安定していました。これは「静かで制御された環境(マクロ環境)が猫のストレスを軽減する」という過去の研究結果と一致しています。

■ 猫砂のタイプも猫の安心に関係

猫は細かいクレイ砂を好む傾向があり、これが初日の尿量に影響していました。

■ CSSは“恐怖”の評価になっている可能性

CSSはストレスというより「見知らぬ人やカメラへの恐怖」を反映している可能性が高いことも示唆されました。

4. わかりやすく一言でいうと

猫が安心するのは、“静かな環境”と、“猫が自分で距離を決められる状況”。
無理に触らず、猫のサインに合わせて接することが一番のストレス軽減になります。

5. 他の研究との比較・本研究の懸念事項

■ 他研究との比較

  • 過去の研究でも「静かな環境のほうが猫のストレスが低い」ことが報告されている
  • ケージの広さより環境全体(音・来客)に影響を受ける点も一致
  • なでる行為は「猫が望む場合」にのみ効果があるという点も以前の研究と一致

■ 本研究の懸念点

  • シェルターAのサンプル数が少ない(16頭)
  • CSSが“恐怖”を捉えている可能性があり、ストレスの完全な指標ではない
  • 動画撮影時に研究者が部屋にいたため、行動に影響した可能性
  • 1日1回の観察では、すべてのストレスを測りきれない可能性

6. 飼い主が得られる気づき

  • 猫は“自分のタイミング”で触れ合いたい
  • 生活音や来客が多い家ではストレスが増えやすい
  • 猫砂は細かい粒の“クレイタイプ”が安心しやすい
  • 新入り猫は数日〜数週間かけて徐々に慣れる
  • 「そっと見守ること」が最大のケアになる

7. 獣医師に相談すべきこと

  • 過剰な鳴き声・排尿の減少・隠れる行動などストレスサインが続く場合
  • 新入り猫との相性問題(多頭飼育時)
  • 排尿場所の問題(トイレの数・砂の種類など)
  • 不安行動が強い場合の行動療法・環境改善相談

8. 飼い主におすすめのアイテム

  • 細かいクレイタイプの猫砂 └ 例:おから系よりクレイ(鉱物)タイプのほうが安心しやすい
  • フェリウェイ(Feliway) └ フェロモンで環境ストレスの軽減に役立つ
  • 静音家電・静音ドアマット └ 騒音を減らして安心できる空間づくりに
  • 隠れ家キャットハウス └ 「高い場所+隠れる場所」の組み合わせが最適

9. 参考文献


Variation in urine output from shelter cats is explained by shelter location, not kennel size. PLoS One. 2025 Apr 8;20(4):e0320130.
doi: 10.1371/journal.pone.0320130. eCollection 2025.

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ブロガー/獣医師・博士(獣医学)/DVM Ph.D.
心でつながるペットケア、やさしい科学をモットーに、最新の研究情報について発信している。
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